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校長からのメッセージ

「異端(イノベーション)」を懼れず、「正統」を怠らず

 慶應義塾高等学校は、2018年に開設70年を迎えます。これを一つの節目と位置付け、さらに本校のこれからの在り方や在るべき姿を改めて考える機会ととらえて、現在、本校は開設70年事業を展開しております。
 この事業においては、本校が求める人物像を「正統と異端イノベーションを兼ね備えた人間」としています。
 「正統」とは、高校生として、塾生として、当然に備えるべき知識、精神、人間性を指します。健全なる心身、相応な知識と思考力、豊かな友人関係、そして人格形成。人間としての成長過程にあって、高校段階で当たり前に求められるこれらを疎かにすることなく、しっかりと身に付ける。それが「正統」です。
 一方、「異端イノベーション」とは、既成の枠組みにとらわれることなく殻を突き破って新たなものを創り出していくという、個々の傑出した能力、技量、気概を指します。当たり前や常識にとらわれることなく、自らの関心や好奇心に応じて何かにつき進む、何かをつき詰める、何かに挑み乗り越えていく。そのような力が「異端イノベーション」です。本校では、この言葉に「イノベーション」というルビを付しています。新しい常識を生み出していく力、新しい時代や社会を切り開いていく力、それを「異端=イノベーション」と考えるからです。
 福澤諭吉先生は『文明論之概略』において、“古来文明の進歩、その初は皆所謂異端妄説に起らざるものなし。” “昔年の異端妄説は今世の通論なり、昨日の奇説は今日の常談なり。然ば則ち今日の異端妄説も亦必ず後年の通論常談なるべし。”と述べられました。
 現在の通論はかつての異端に発するものであり、現在の異端はやがて新たな通論になる。異端の志をもつ者こそが次の時代や社会を創り出す先導者になる。本校がめざす人物像とは、そのような「異端イノベーション」を備えた生徒です。
 もちろん、「正統」と「異端イノベーション」は二者択一のものではありません。「正統」という土台があって初めて、「異端イノベーション」は結実します。「正統」なき「異端イノベーション」は、時代や社会を先導する力にはなり得ません。「正統と異端イノベーションを兼ね備えた人間」こそが義塾の掲げる「全社会の先導者」に足るのです。
 「異端イノベーション」をめざすことを懼れず、あわせて「正統」を身に付けることを怠らない人間。そのような生徒を育む場として機能することを、本校はめざし続けます。
 最後になりましたが、慶應義塾高等学校の教育活動にご関心とご期待をお寄せいただいているすべての方々に対して、心より御礼を申し上げます。また、本校の教育活動によりいっそうのご理解とご協力ならびにご支援を賜りますよう、重ねてお願い申し上げます。

校長 古田 幹

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