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2018年度入学式 学校長式辞

2018年4月5日

 新入生の皆さん、慶應義塾高等学校へのご入学、まことにおめでとうございます。高等学校を代表して、皆さんを心より歓迎いたします。また、この入学式にご出席いただいております、新入生のご家族、ご関係者の皆さまにも、今日の良き日を迎えられましたこと、心よりお喜び申し上げます。
 本日、第71回の慶應義塾高等学校入学式をこのように行うことができますことを、大変に嬉しく思っております。
 学事報告にありました通り、本日、高等学校に入学する新入生は、729名をかぞえます。
 当然のことではありますが、新入生の皆さん一人一人の、中学時代の過ごし方、本校へのアプローチの仕方、そして本校で思い描く高校生活は、それぞれに異なるはずです。さまざまなバックグラウンドを有する皆さんではありますが、高等学校に入学するにあたっては、ぜひ、本校生徒として共有すべきことをしっかりと認識し、それを踏まえて、本校での生活、本校で過ごす3年間、を有意義なものにしていってほしい、と思います。
 さて、そのような、共有してほしいこと、しっかり押さえてほしいもの、について少し話をいたします。

 慶應義塾の塾生に求められるもの、それは「全社会の先導者」になることです。慶應義塾の一貫教育校の一つである高等学校においても、もちろん、それは同じです。すなわち、高等学校は、「将来のリーダー」たることを生徒に求めます。そのような生徒を育むことを、高等学校としてめざしています。
 それでは、高等学校が考える「将来のリーダー」とは、どのようなものでしょうか。
 高等学校では現在、独自の新たな教育モデルとして、「日吉協育モデル」の構築と実践を掲げています。高等学校が所在するこの日吉キャンパスにおいて、さまざまな方々の協力のもとに生徒を育む、それが「日吉協育モデル」です。協育という言葉には、教え育むではなく、協力して育む、の協の字をあてています。この「日吉協育モデル」において高等学校が求める生徒像、これを「正統と異端を兼ね備えた人間」としています。まさに、これが高等学校の考えるリーダーの姿となります。
 「正統と異端を兼ね備える」。
 ここでの「正統」とは、15歳から18歳の高校生として、また慶應義塾の塾生として、当たり前に身に付けるべきもの、当然に備えるべき知識や思考力、理解力、健全なる身体と相応の体力、精神性や人間性、社交性などをさします。これらをしっかりと身に付ける、それが「正統を備える」ということです。
 一方、「異端」とは、既成の枠組みにとらわれることなく殻を突き破って新たなものを創り出していくという、個々の傑出した能力、技量、気概をさします。自らの関心や好奇心に応じて、それを徹底的に深め、また伸ばしながら、何かにつき進む、何かをつき詰める、何かに挑み、それを乗り越えていく。そのような力が「異端」です。この力は、新しい時代や社会を切り開いていく力に通じる、と考えています。それゆえに、高等学校では、この「異端」という言葉に、敢えて「イノベーション」というルビを付しています。
 福澤諭吉先生は『文明論之概略』において、この「異端」について次のように述べています。
“古来文明の進歩、その初は皆所謂異端妄説に起らざるものなし。”
“昔年の異端妄説は今世の通論なり、昨日の奇説は今日の常談なり。然ば則ち今日の異端妄説も亦必ず後年の通論常談なるべし。”
 文明の進歩、つまり新しい時代や社会は、すべて「異端」からはじまる。かつては「異端」とされていたものが、現在では通論、当たり前となっている。であるならば、現在「異端」とされるものも、やがては新たな通論、当たり前となる。と、このように「異端」を位置付け評価しているのです。
 高等学校が考えるリーダーには、そのような「異端=イノベーションを備える」ということが求められます。
 ただし、「正統」を軽んじて、ただ「異端」のみをめざし追い求める、ということでは、もちろんありません。「正統」という土台があって初めて、「異端」はイノベーションとしての力を発揮します。「正統」なき「異端」は、新たな時代や社会を創り出す力、時代や社会を先導する力、にはなり得ません。高等学校が求める生徒、慶應義塾がめざす「全社会の先導者」とは、「正統」を踏まえたうえで「異端」を磨き伸ばしていく人間、すなわち、「正統と異端を兼ね備えた人間」です。

 「正統と異端」、これが高等学校の生徒として、皆さんに共有してほしいこと、押さえてほしいものです。
 これからの高校生活の中で、「正統」を疎かにすることなく、これを全員がしっかりと身に付けてください。そして、そのうえで、それぞれが自らの「異端」を存分に伸ばしてください。この二つを兼ね備えることで、皆さんが「将来のリーダー」たる存在になっていくことを、また、高等学校の生徒として、慶應義塾の塾生として、相応しい人間へと成長していくことを、大いに期待し、また楽しみにしています。

 以上をもって、私の式辞といたします。
 最後に、改めて。皆さん、慶應義塾高等学校への入学、おめでとう。

2018年4月5日 校長 古田 幹


慶應義塾高等学校